福岡医薬学歴史散歩

FUKUOKA

研修報告書(前半)

2023年8月6日

澤村 理英

2023年8月6日(日曜日)に福岡の医薬学史を学ぶ「福岡医薬学歴史散歩」研修旅行に参加しました。

研修の前半について報告します。

 

熊本から福岡へ

熊本から福岡、研修中は貸切りマイクロバスで移動しました。

薬局セントラルファーマシー長嶺から出発し、福岡への道中は車窓から見える各地の解説、地元企業の豆知識など、バスガイドさんによる解説を聞きながら過ごしました。

いつもは気にせずに通りすぎていた風景が知識を得ることでより一層楽しく感じられました。

 

櫛田神社

福岡にて講師の山下嘉昭先生を迎え、まずは櫛田神社に参拝しました。

櫛田神社は博多総鎮守で大幡主大神、天照皇大神、素盞嗚大神を祀る神社です。

素盞嗚大神への奉納神事である「博多祇園山笠」はユネスコ無形文化遺産に登録されおり、諸説ありますが、鎌倉時代に天承寺住職の聖一国師が天然痘の疫病退散を祈念し、水をまきながら町を清めたことを発祥とするのが通説となっています。

境内には巨大で立派な山笠が奉納されていました。

本殿脇の「霊泉鶴の井戸」からは、塩分濃度の高い水が湧き出ており、三口に分けて飲むことで本人、家族、親戚の無病息災を願う霊水として長く大切にされてきたそうですが、現在は水質検査の関係で残念ながら飲用できないようです。

「櫛田の銀杏」と呼ばれ、樹齢千年と言われる不老長寿のご神木もあり、本当に長い歴史のある場所だと実感しました。

 

人参公園~薬院~賛生館跡~鴻臚館跡~貝原益軒屋敷跡

櫛田神社の後は、車窓越しに史跡を巡りました。

まずは、かつて薬用人参であるオタネニンジン栽培跡地の一部が公園として残された「人参公園」に行きました。

江戸時代に幕府が全国で栽培を奨励するために種を配ったことで「御種人参(おんたねにんじん)」と呼ばれ、オタネニンジンの名前の由来となりました。

次に、奈良時代の学者である吉備真備が薬草園を開き、薬草を使って治療をする施薬院を作ったことに由来する「薬院」を通り、福岡藩の藩校で、現在の九州大学医学部に発展した「賛生館」があったとされる中央区役所付近を通過し、平安時代に海外との外交のために作られた「鴻臚館」跡がある平和台球場へ行きました。

鴻臚館を通じて遣唐使などが往来すると同時に、天然痘などの伝染病も伝わったそうで、いつの時代も人の往来と伝染病には密接な関係があるのだと思いました。

そして、江戸時代の偉人である貝原益軒の屋敷跡を通過し、次の目的地である貝原益軒墓所、亀井南冥墓所に行きました。

貝原益軒屋敷跡は現在はマンションになっており、石碑でその跡が確認できます。

 

貝原益軒墓所、亀井南冥墓所

貝原益軒と亀井南冥の墓所は通りを挟んで向かい合わせの寺院にあり、歩いてお参りに行きました。

貝原益軒は江戸時代の儒学者、本草学者として活躍した人物で、日本独自の本草書である「大和本草」、健康でいるための身体と精神の養生について述べた「養生訓」の著者です。

ヨクイニンがイボに効くことを最初に発見した人物でもあります。

墓所は金龍寺内にあり、貝原益軒と夫人の墓石が二つ仲良く並んでいました。

貝原益軒は愛妻家だったそうです。

近くには銅像も建てられていました。

 

亀井南冥は貝原益軒より後の江戸時代に儒学者、医師、教育者として活躍した人物で、墓所は浄満寺内にあり、南冥だけでなく一族の墓石が立ち並んでいました。

歴史の教科書にも載っていた、志賀島で発見された金印の由来等を研究し「金印弁」記した人物でもあります。

亀井南冥は福岡藩の二つの学問所のうち、西の学問所であった「甘棠館」の館長を務め、甘棠館が焼失した後は、息子の昭陽とともに私塾の亀井塾で多くの人材を育て、弟子は日本各地から訪れたそうです。

学びに身分性別を問わなかった昭陽の弟子には高場乱という女性もおり、彼女はオタネニンジン畑跡地に人参畑塾と呼ばれた私塾の興志塾を作り、儒学者、医者、教育者として活躍したそうです。

いつか高場乱の史跡にも行ってみたいと思いました。

 

甘棠館跡~水城跡~太宰府

偉人墓所へのお参りの後は、亀井南冥が館長を務めた「甘棠館」跡、古代に海外からの侵略に備えて防衛のために築かれ、後に政府機関である大宰府の守りとなった「水城」跡を車窓から眺めながら、太宰府天満宮へ移動しました。

現在の水城は高速道路等の交通網を通すため分断された状態で残っており、その地名の由来にもなったそうです。

 

太宰府天満宮参道(昼食)

昼食は太宰府天満宮の参道に店舗を構える「和牛めんたい重 神楽」にて、現在人気の「和牛めんたい御膳」を頂きました。

甘めに味付けされた和牛とふくやの明太子がまるまる一腹入った御膳は、味はもちろん彩りも鮮やかで、凝った細工箱を開帳するおもてなしを含め、お腹と心が満たされました。

 

研修を終えて

今回の研修は日帰りでしたが、多くの貴重な知識を得て、濃密な時間を過ごすことが出来きました。

何気なく通り過ぎていた場所にも歴史があり、その積み重ねが古代から近代、今日にまで続いているということを実感しました。

研修の企画、実施に携わった皆様に心より感謝申し上げます。

研修報告書(澤村)